日本の男子・女子マラソン選手が世界で勝てない3つの理由

さいたま国際マラソンは長谷川瑞穂(36歳)が日本人最高の5位でした。

タイムも2時間36分16秒でロンドンの世界選手権派遣設定記録の2時間22分30秒に届きませんでした。

リオオリンピックもそうですが、長い間男子も女子もマラソンは低迷を続けています。

日本陸連の体制が悪いとか、大学駅伝が最大目標となって燃え尽き症候群になるからとか、社会人は駅伝活動が中心だからとか言われています。

その通りだと思います。

でも私は、以下の3つが最も勝てない具体的な理由と思います。

その3つとは・・・

  • 選手に人気がないため人材がいない
  • そもそもマラソンの練習をしていない
  • 国外レースに出ていない

です。

これらの理由は結果的には駅伝活動中心にも繋がりますが、少し違う視点から話をしてみます。

選手に人気がないため人材がいない

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マラソンは日本人に人気のあるスポーツです。

テレビ中継の視聴率は良いし、沿道にもたくさんの応援する人がいます。

東京マラソンを初め地方の市民参加のマラソンも、抽選で当選しないと参加できないほど人気があります。

実際このマラソンという競技は日本人の気質にあっているのだと思います。

長く苦しい経験をした後にやりとげたという達成感が幸福をもたらすのかもしれません。

公園では多くの人がジョギングしていて、取り付かれたように走る方もいます。

一種の麻薬のようなものかもしれません。

このように一般人に人気は高いマラソンなのですが、果たして選手はマラソンが好きなのでしょうか?

マラソンを本格的に始める年代は大体、大学卒業頃からです。

それまでマラソンを目標にする環境が日本にはあまりありません。

大学駅伝で燃え尽きてしまうと言いますが、そもそも目指しているものが違うのではないでしょうか?

今の日本人の長距離ランナーは駅伝がしたくて、中学・高校時代に長距離の部活動をしている人が多いように見えます。

オリンピックや国際マラソン大会で優勝することを、目標としているようには思えない。

そんな意識がない若い世代から、有望な人材が出てくる可能性はほとんどありません。

つまり底辺が狭いのです。

私が子供の頃には宗兄弟や瀬古俊彦を中心とした選手が、オリンピックや国際マラソン大会での優勝を目標としているのが伝わっていました。

本人たちはそれを目標にしていたかどうかはわかりませんが、観客である私にはテレビで見ていて伝わっていました。

だからその後も中山竹通や谷口浩美などの選手が出てきたのだと思います。

人気のないスポーツから世界で活躍する選手が出てくるには、何十年にたまたま1人出るかどうかだと思います。

それではいつまでたっても国際マラソン大会で優勝できる日本人は出てきません。

日本マラソン界は長距離選手に対し、底辺拡大のための施策を早急に行う必要があります。

元々人気があるスポーツです。

そこから目標を国際マラソン大会に振り向ける環境作りが出来れば、有望な人材が出てくるでしょう。

そもそもマラソンの練習をしていない

これも前段の話に通じます。

オリンピックに出るのにマラソンの練習をしていませんよね?

急な高地トレーニングしても当然結果は出ません。

高橋尚子がシドニーオリンピックで金メダル取れたのは、マラソンの練習をしていたからです。

それも時間を掛けて練習していました。

でも今の選手は駅伝の練習が中心です。

社会人チームに属すると環境がそうなります。

仕方ありません。

でもそれでは国際マラソン大会で勝てるわけありません。

マラソンの練習をしない限り、オリンピックの金メダルは無理です。

国外レースに出ていない

これは世界選手権とかの国外レースという意味ではなく、トップランナーが参加する国際マラソン大会のことです。

日本で開催される国際マラソン大会は参加しますが、国外の大会にはほとんどの日本人選手は積極的に参加していません。

やはり実戦経験を積むのが強くなる近道です。

実際、外国の強豪選手は日本の国際マラソン大会には昔から参加しますよね。

でも日本人は逆にあまり参加しません。

それに国内マラソンはペースメーカー主導のレースばかりです。

35km辺りまではみんないっしょで、その後勝負みたいなレースをよく見ますよね。

でもオリンピックや国外のマラソン大会はレース中盤から、時には10km過ぎからアフリカ勢が突き放して、日本人は付いていけない場面を最近よく見ます。

ペース配分を他人頼りにしている(要するに甘い)為、世界のスピードに付いていけません。

いずれにしてもこんな生温い環境で、そもそも国際マラソン大会に勝てるわけがありません。

この環境を早急変えるのが、日本陸連のマラソン部の一番の仕事ではないでしょうか。

そして出来るはずです。

実際、出来ている競技があります。

それは競歩です。

今回リオオリンピックで男子50km競歩で日本選手として始めて荒井広宙(世界ランク2位)が銅メダルを取りました。

実は男子50kmの今季世界ランク2位、3位、9位は日本人です。

実は日本の競歩は今、世界でレベルで活躍しています。

リオには不参加でしたが、鈴木雄介は20km競歩の世界記録保持者です。

実際、男子20kmの今季世界ランク1位、2位、3位は全て日本人です。

リオオリンピックの男子20kmは松永大介の7位入賞が最高で結果的に惨敗でしたが、基本的な力は世界トップレベルにあります。

でもこれは急に強くなったわけではありません。

強くなった原因は簡単に言うと、

日本陸連の競歩部が世界と戦うために選手と手を組んだ

ということです。

選手が世界レベルで競争できるようにするための環境作り、練習方法など、様々な取り組みが今実を結びつつあります。

だから強いのです。

何より選手が世界を目標にしています。

ここがマラソンと違います。

こんなお手本が間近にあるのに、マラソン関係者は何をしているのでしょう。

スポーツで強いところはやはり管理部(いわゆるフロント)がしっかりしています。

プロ野球とJリーグが良い例です。

フロントがしっかりしている時、そのチームは強いです。

当たり前のことです。

今の日本陸連のマラソン部には、選手が国際マラソン大会を目標とするような体制にはありません。

その体制作りが出来なければ東京オリンピックは元より、今後20年は厳しい時代が続くでしょう。

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